賢者は歴史に学ぶ「香港と尖閣諸島」
香港と尖閣諸島
香港はイギリスの植民地だった
150年以上もイギリスの植民地であった香港が中国に返還されたのは1997年です。その時、中国とイギリスは「一国二制度を50年間続ける」という取り決めをします。つまり、香港には「高度な自治」が認められていたのです。しかし小中学校では、2012年より中国共産党が推し進める愛国教育が始まります。
若者を中心に雨傘運動が起こる
教育現場でも中国共産党の影響が強まり、それに反対した若者たちが民主的な選挙を求めて立ち上がります。それが2014年の「雨傘運動」です。香港トップの行政長官を市民が直接選ぼうとする運動でしたが、当局による強制排除で希望は叶わず、中国による支配が強まります。
「民主派」対「親中派」の構図
しかし、すべての国民が中国に批判的な立場を取ったわけではありません。香港企業と中国経済は深くかかわっており、中国寄りの「親中派」と中国に批判的な「民主派」に二分され、香港経済は混沌とした状況が続きます。国際的な金融センターで世界有数の貿易拠点がある香港は中国にとっては完全に支配下に収めたい国です。
「香港国家安全維持法」が施行される
先進国の批判も顧みず、中国は若者によるデモを力で封じ込め、2020年6月30日に「香港国家安全維持法」を施行します。翌日には逮捕者が出て、集会に参加した約360名が拘束されます。
中国の強権は香港のみならず、南シナ海や東シナ海にも波及する
新法を巡っては、多数の国や人権団体が警笛を鳴らしますが、中国は動じる気配を見せません。それどころか、南シナ海・東シナ海・黄海での軍事演習を重ねて、同海域における影響力を拡大しています。それは、台湾や日本の海域にある尖閣諸島にも影響します。
尖閣諸島とは
尖閣諸島は沖縄本土から西に400キロの東シナ海に浮かぶ小島群です。沖縄県石垣市に属し、8つある島のうち一つだけが私有地で、あとは全て国有地です。
中国の主張
東シナ海の領有権は日本、韓国、中国との中間地点を等分する境界線ルールを基本とします。 一方の中国は自国から張り出す大陸棚の沖縄トラフまで主権が及ぶと主張します。当然尖閣諸島は自国の領有権が及ぶとの見解です。
尖閣諸島の領有権
今まで無人島である尖閣諸島が注目されることはありませんでした。 しかし東シナ海の海底に莫大な地下資源が眠っていることがわかり状況が一変します。中国が尖閣諸島における自国の権利を主張し始めたからです。
排他的経済水域とは
「排他的経済水域」とは自国の海岸線から200海里(370.4キロメートル)の範囲内においては、独占的に調査・開発・管理などができる権利です。 東シナ海における日中の排他的経済水域と大陸棚は未だ確定されていません。しかし中国側は日中中間線のすぐ内側で一方的な開発行為を進めています。
日本政府が尖閣諸島を購入する
2012年4月に当時の都知事石原慎太郎が尖閣諸島の購入を突然発表します。所有者は埼玉県の実業家でした。それを機に中国政府から猛抗議が入ります。当時の野田政権(民主党)は、その打開策として国有化を発表します。 2012年9月、政府は魚釣島、南小島、北小島の3島を20億円で購入して国有地としました。
まとめ
沖縄返還協定の時に尖閣諸島の施政権は沖縄に戻っています。そのため世界の国々では「尖閣諸島の領有権は日本にある」との認識がほとんどです。 しかし、東シナ海や南シナ海の実効支配を狙う中国にとって尖閣諸島は譲れない海域です。様々な分野で自由化が進む香港を取り込もうとする中国の動きが、今後は領海域に及ぶことも明らかです。中国を取り巻く各国の協調が重要な意味を持つことになります。
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