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「大学共通テスト」で日本経済を学ぶ

今回のブログでは、「大学共通テスト」で出題された実際の問題を通して日本経済の現状を確認します。特に1月15日(土) に実施された令和4年度大学共通テスト「政治・経済」の問題を使って説明します。

 



巣ごもりで特需が発生


ここ数年、テレワークの仕事が増えたことから、パソコンやその周辺機器への需要が急速に高まりました。また、外出が減って自宅で過ごす時間が増えたことで、大型家電や高額の調理器具、自家用車などの買い替え需要が発生し、電子部品の代表格である半導体などが大量に不足しています。企業は、その需要を取り込むために、急いで新工場を設立しようと考えます。


株式会社と企業業績


新工場を設立するために、企業は新規資金が必要となります。一般的には、銀行から融資を受けますが、取引所に上場していれば、株式や債券を発行するなど、資金調達の選択肢が増えます。令和4年共通テスト「政治・経済 2問の設問1」では、株式会社や企業業績についての基本的な仕組みが問われています


【問題】企業に関する記述として最も適当なものを、後の1~4のうちから一つ選べ。


1. 自社の株価の低下を招くような社内の行為をその会社の株主が監視することを、リストラクチャリングという。

2. ある企業の1年間の利潤のうち、株主への分配率が上昇すると内部留保への配分率も上昇し、企業は設備投資を増やすようになる。

3. 世界的に拡大した感染症による経済的影響として、いわゆる巣ごもり需要の増加に対応することで2020年に売上げを伸ばした企業があった。

4. 1990年代のバブル経済崩壊後、会社法が制定され、株式会社設立のための最低資本金額が引き上げられた。


【解答】正解は、「 3 」です。

1.のリストラクチャリングは「リストラ」のことで、事業の再構築を意味します。2.の株主への分配率とは、株主に支払う配当金を指しており、儲かったお金を株主に配当金として支払えば、会社に残るお金(内部留保)は当然減ります。結果、設備投資に回すお金も減るので、誤りです。4.の最低資本金額は廃止されています。

 



金融政策と量的緩和


日本銀行は、景気が悪化すると金利を引き下げて景気を下支えします。ただ、金利がゼロになっても景気が回復しなければ、次の一手を考えます。それが、量的金融緩和政策です。

具体的には、金融機関が保有する国債などを日本銀行が購入して、金融機関に資金を供給する手法(買いオペレーション)です。国債を保有していた銀行は、満期を待たずに現金が手元に入るので、その資金が融資に向かうと考えます。

しかし、実際には有望な投資先が見つからず、資金が銀行で眠った状態が日常化しています。銀行の余った資金は日本銀行の当座預金に貯えられています。令和4年共通テスト「政治・経済 第2問の設問4」では、日銀の量的金融緩和政策の限界を解説しています


【問題】以下は、日本銀行の金融政策である公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)についての【X君】と【Y君】の会話です。(ア)(イ)に当てはまる組み合わせとして最も適当なものを、後の1~4の内から一つ選べ。


X君  :日本銀行は、買いオペレーションや売りオペレーションで、個人や一般企業が保有する通貨量を変動させているようだね。

Y君  :たしかに、買いオペは金融( ア )の効果が期待できると言われているけど、日本銀行が市中銀行から国債を買い入れると、確実に増えるのは市中銀行が保有する日銀当座預金の残高だね。

X君  :それは、個人や一般企業が保有する通貨量、つまり( イ )が増加すると考えて良いのかな?

Y君  :( イ )が増加するかどうかは、個人や一般企業の資金需要と市中銀行の貸出しが増加するかどうかによるよ。

X君  :それなら、日本銀行の公開市場操作は( イ )を直接的に増減させるものではないということだね。

1. (ア)緩和  (イ)マネーストック

2. (ア)緩和  (イ)マネタリーベース

3. (ア)引締  (イ)マネーストック

4. (ア)引締  (イ)マネタリーベース

 

【解答】正解は、「 1 」です。


マネーストックとは、民間部門が保有する現金や預金のことです。日本銀行が「買いオペレーション」で金融緩和に動いても、銀行に入った資金が世の中に回らなければ、私たちの収入(マネーストックと考える)も増えず景気も浮揚しません。特に2012年以降の日本経済を言い当てています。

 



長期的な視野で為替水準を計る指標が「購買力平価」


グローバル化した世界では、少しでも高い金利を求めて大量の資金が国境を越えます。「米国の金利が上がりそうだから、今のうちに米国にお金を移そう」といった感じです。そう考えれば、金利の高い国の通貨は、必然的に高くなるはずです。

しかし、現実にはそうはなっていません。金利が高くても、通貨安に見舞われている国は数多くあります。その原因を紐解きます。令和4年共通テスト「政治・経済 第2問の設問9」では、物価の違いが為替に及ぼす影響を購買力平価を使って説明しています


【設問】購買力平価に基づいて算出される外国為替レートを基準(1ドル=Ⓡ円)に考えるとき、20××年〇月〇日における実際の為替レートの状態を表す記述はどれか。正しいものを、後の1~4のうちから1つ選べ。(注)日米ともに同じハンバーガーで時差はないと考える。



1. 実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円安ドル高である。

2. 実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円高ドル安である。

3. 実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円安ドル高である。

4. 実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円高ドル安である。


【解答】正解は、「4」です。


実際の為替レートで考えると、米国でハンバーガーを495円(5ドル×99円)で仕入れて、日本では600円で売れば、105円儲かる計算です。購買力平価は、この儲けが無くなる様に為替が自動調整されると考えます。その水準は、600円÷5ドル=120です。つまり、算出された120円(購買力平価)と99円(実際の為替レート)の差額である21円だけ円高ドル安の水準だと説明できます。

次のスライドは、ドル円購買力平価と実勢相場の推移を表しています。2014年以降、消費者物価指数と企業物価指数の間で推移していたドル円相場(実勢相場)が、2022年1月時点では消費者物価指数を上回ってきたことが読み取れます。


専門家による短期的な為替予想は比較する国(日米など)の金利差を使い、中長期的な為替予想は消費者物価指数や企業物価から算出する購買力平価を使うケースが一般的です。



今年の日本は、インフレ到来?


今年になって、一段とガソリンや食料品の価格が上昇してきました。そろそろ、インフレへの備えが必要になるかも知れません。令和4年共通テスト「政治・経済 第2問の設問3」では、インフレが国民生活に及ぼす影響について問われています


【設問】下記の文章は、物価の変動が国民生活に与える影響について述べています。インフレについて( ア )~( エ )に当てはまる語句の組み合わせとして正しいものを、1~4のうちからひとつ選べ。


物価の変動は私たちの生活に影響を与える。私たちが買い物をするときを考え、名目の消費支出額を一定とする。すべての財・サービスの価格が同じ比率で変化したとすると、物価上昇前と比較して物価上昇後に消費できる数量は( ア )することになる。

物価の変動は、債権者や債務者にも影響を及ぼす。金利が変化しなかったとして、貸借が行われた時点では想定されていなかったインフレが発生した場合、インフレが発生しなかった場合と比較すると、債権者にとっては経済的に( イ )に、債務者にとっては、経済的に( ウ )になる。これは支払われる金額が事前に確定しており、その後インフレが進行した場合、この債権・債務の価額が実質的に( エ )することになるからである。

1. (ア)増加 (イ)有利 (ウ)不利 (エ)上昇

2. (ア)増加 (イ)不利 (ウ)不利 (エ)下落

3. (ア)減少 (イ)有利 (ウ)不利 (エ)上昇

4. (ア)減少 (イ)不利 (ウ)有利 (エ)下落

 

【解答】正解は、「4」です。


1万円で買えたモノが物価上昇で買えなくなれば、お金の価値が下がったことを意味します。当然、消費(購入)できる数量は減少します。住宅ローンは、マンションや一戸建てを購入した時に組むのが一般的です。融資する銀行が債権者で、ローンを組む人が債務者です。インフレでマンション価格が上がれば、お金を借りた人(債務者)の方が得します。価格が上昇したマンショを売却して、借りたお金を返済しても、手元にお金が残るからです。

 



最後に


経済の基本的な仕組みは、大学入試に組み込まれています。そして、この4月からは高校の「家庭科」でも、株式や投資信託の授業が始まります。早いうちから、金融商品や資産運用について学ぶことは、大変意義のあることです。それは、私たちの生活の大部分が資本市場のルールに従って成り立っているからです。

フェイクニュースに惑わされず、金融リテラシー(お金に対する知識や判断力)を高めて堅実な資産運用の手法を身に付けることが必要な時代になってきました。


【参考】高等学校学習指導要領(解説)家庭科編より一部抜粋


~ 預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット・デメリット)、資産形成の視点にも触れながら、生涯を見通した経済計画の重要性について理解できるようにする。情報の収集・整理が適切にできることについては世の中に大量にあふれる生活情報の中から、短期的・長期的な経済の管理や計画に関連した適切な情報を収集し、ICTや統計資料等を活用して整理できるようにする。

(注意)このサイトの設問は、すべて筆者が共通テストの問題を要約したものです。当ブログは、「共通テスト」と「実体経済」の繋がりを意識することに主眼をおいており、前提条件など多くの部分を省略して作成しています。実際の問題は、大学入試センターのサイト等で確認して下さい。
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