贈与の仕組みと特例あれこれ

贈与は、相続と並んで財産を移転するための重要な手段の一つです。しかし、贈与には様々なルールや税金が関わっており、複雑に感じる方も多いのではないでしょうか。
このブログでは、贈与の仕組みを分かりやすく解説し、贈与に関する疑問を解決していきます。贈与を検討されている方や、贈与について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にして下さい。
贈与とは?
贈与とは、自分の財産を無償で相手に与える意思表示をし、相手方が受託することによって成立する契約(諾成契約)です。贈与契約は口頭でも、書面でも行うことができますが、口頭の場合は一方的に贈与契約を取り消すことができます。ただし、すでに贈与した財産は戻ってきません。
贈与の種類
贈与の種類には、次のようなものがあります。
・単純贈与:贈与の度に契約を結ぶもの。
・負担付贈与:受贈者に一定の債務を負わせることを条件にした贈与契約(例:何かをしてくれたらお金をあげる)。
・死因贈与:贈与者の死亡により実現する贈与(例:私が死んだら●●をあげる)。
・定期贈与:定期的に行う贈与(例:毎年12万円を5年間あげる)。ただし、どちらか一方が亡くなれば効力を失います。
注:死因贈与により取得した財産は、贈与税ではなく相続税の対象となります。また、贈与者は遺言により死因贈与を撤回することができます。

贈与の申告と納付
贈与税は、個人から財産を贈与された受贈者(もらった人)に課されます。受贈者は、原則として贈与があった年の翌年2月1日~3月15日の間に申告と納税を行います。贈与には基礎控除額が110万円あるので、贈与財産の合計額が110万円以下であれば申告は不要です。
前年に複数人から贈与を受けた場合は、その合計額から基礎控除額(110万円)を控除して、下の表に従い贈与税額を算出します。
【贈与税の速算表】
一般贈与財産用(一般税率):「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使います。兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子(未成年)への贈与などが該当します。

贈与財産の価額が500万円の場合(一般税率)
・基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円
・贈与税額の計算 390万円 × 20% - 25万円 = 53万円
特例贈与財産用(特例税率):18歳以上の者が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合の贈与税の計算に使います。祖父から孫への贈与、父から子への贈与などが該当します(夫の父からの贈与等には使用できない)。

贈与財産の価額が500万円の場合(特例税率)
・基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円
・贈与税額の計算 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円
出典:「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)

贈与税の特例について
贈与税の特例とは、一定の条件を満たせば、贈与税がかからない、または税額が軽減される制度のことです。
贈与税の配偶者控除
婚姻期間20年以上の夫婦間で、配偶者から居住用不動産やその購入資金をもらった場合に利用できます。控除額は最大2,000万円ですが、暦年課税の基礎控除110万円も併用できるため、合計で2,110万円まで控除できます。
相続時精算課税制度
生前に贈与した財産と相続により取得した財産を合算して、相続税を再計算する仕組みです。60歳以上の親族が、18歳以上の子供や孫などへ贈与した場合に適用できます。2,500万円までは非課税で、超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。暦年課税の基礎控除は使えませんが、相続時精算課税の基礎控除110万円との併用はできます。相続時に合算される贈与財産は、贈与時点の時価で計算されるために、将来値上がりが期待できる財産を贈与することがポイントです。

教育資金の一括贈与の非課税
直系尊属(父母・祖父母等)が、30歳未満の子や孫に教育資金を一括で贈与(前年合計所得が1,000万円超は対象外)した場合に、受贈者一人につき1,500万円(塾などの教育サービスは上限500万円)までが非課税となります。金融機関に信託するなど、一定の条件を満たす必要があります。30歳になった時点で資金が残っている場合は、原則贈与税の対象となります。適用期間は2026年3月31日までの贈与です。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
直系尊属(父母・祖父母等)が、18歳以上50歳未満の子や孫に結婚・子育て資金の一括贈与(前年合計所得が1,000万円超は対象外)をした場合に利用できます。金融機関に信託するなど、一定の条件を満たす必要があります。子育ての場合は一人あたり1,000万円、結婚資金の場合は一人あたり300万円までが非課税となります。この特例は、贈与税の暦年課税の基礎控除(110万円)、相続時精算課税制度、住宅取得資等資金の贈与、教育資金の一括贈与とも併用できます。適用期間は2025年3月31日までの贈与です。

住宅取得等資金の贈与の非課税
自身の直系尊属(父母・祖父母)から、18歳以上(その年の合計所得が2,000万円以下)の者が、土地の取得資金の贈与を受けた場合に適用できます。一般住宅500万円、耐震、省エネ等住宅1,000万円までが非課税の対象です。直系尊属が7年以内に死亡しても、相続財産に加算されません。贈与税の暦年課税の基礎控除(110万円)、相続時精算課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与とも併用できます。贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅等を購入していることが条件です。
(注意)床面積の条件:合計所得金額1,000万円以下の受贈者は家屋の床面積40〜240㎡以下(1,000万円超の受贈者は家屋の床面積50〜240㎡以下)で、何れも2分の1以上が居住用であること。
贈与税の特例を活用する際の注意点
・適用条件が複雑 それぞれの特例には、適用条件が細かく定められています。 贈与を行う前に、税理士など専門家に相談することがおすすめです。
・適用期間に注意 多くの特例には、適用期間が定められています。 贈与を検討する際には、適用期間を確認しましょう。
・他の特例との併用 複数の特例を併用できるケースもあります。 より有利な方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
当ブログは、2025年1月末時点の法令に従い作成しています。
上記は贈与税の一般的な事項について記述したものです。贈与税の詳細については、最寄りの税務署、あるいは税理士にご相談ください。
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