Blog ブログ

Blog

HOME//ブログ//知っておきたい!国の財政の基本:一般会計、特別会計、連結決算とは? ~「プライマリーバランス」や「国の基金」 の問題点を探る~

お役立ち情報

知っておきたい!国の財政の基本:一般会計、特別会計、連結決算とは? ~「プライマリーバランス」や「国の基金」 の問題点を探る~



私たちの暮らしと密接に関わる国の財政。ニュースなどで目にする「一般会計」「特別会計」「連結決算」といった言葉、なんとなく聞いたことはあっても、その違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、国の財政を理解するための基本的な用語である「一般会計」「特別会計」「連結決算」について、わかりやすく解説します。さらに、プライマリーバランス、国債、特別会計の問題点についても掘り下げていきます。

一般会計とは?

一般会計とは、国の基本的な活動を支える財布のことです。税金などを主な財源とし、国の基本的な活動を経費として計上する会計です。国の予算の中心となるもので、社会保障、教育、防衛、公共事業など、幅広い分野の経費が含まれます。



出典:「令和7年度予算政府案」(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/seifuan2025/index.html

具体的に、令和7年度当初予算の一般会計歳出を見てみましょう。

・社会保障費:38兆2,778億円(年金給付、介護給付、少子化対策などに使われる。当初予算では、自然増を抑える一方で、高額療養費の負担上限引上げや、薬価改定などで対応する)

・防衛関連費:8兆6,691億円(ミサイル基地拠点への反撃能力の構築や無人機の本格導入、自衛官処遇改善に使われる)

・公共事業費:6兆858億円(災害対応の建物の耐震化や上下水の急所施設の耐震化。物流ネットワークの強化や羽田空港での航空機衝突事故を受けた安全対策に使われる)

・文教及び科学振興費:5兆5,496億円(教職員人件費などを含む)

・その他:9兆6,630億円(食糧安全供給関係費、エネルギー対策費など)

・地方交付税交付金等:19兆784億円

・国債費:28兆2,179億円(債務償還費17兆6,693億円+利払い費10兆5,485億円)

一般会計歳入の内訳をみると、

・税収および印紙収入:78兆4,400億円(所得税、法人税、消費税等)

・その他収入:8兆4,525億円

・公債金:28兆6,490億円(特例国債と建設国債)

ポイントは、社会保障費の増大が国債増発の主たる要因になっていることです。医療、年金、介護といった社会保障費は高齢者が中心なので、将来の投資に繋がる社会インフラや教育関連費、災害対策費へのシフトが求められています。結果的には、世代間に著しい不公平感をもたらします。

プライマリーバランス(PB)とは?

プライマリーバランス(基礎的財政収支)とは、国や地方自治体の財政状況を示す指標の一つで、「借金を除いた税収などで、借金返済を除いた支出をまかなえているか」を表します。プライマリーバランスが均衡すると、新たな借金は借金の元本とその利息のためだけに支払われていることになります。

令和7年度の当初予算にあてはめると、借金を除いた税収などが「86兆8,925億円」で、借金返済を除いた支出が「87兆3,237億円」です。歳出が歳入をわずかに上回っています。日本のプライマリーバランスは長年赤字が続いていますが、2025年度は黒字化の可能性も残っています。



プライマリーバランスを均衡させても、上表(中央のグラフ)のとおり、新たな借金は過去の借金の元本と利息を返済しているだけなので、債務残高までは減りません。本来の「財政収支均衡」とは、少なくとも過去の借金の利息を返済することで、債務残高そのものは増やさないことを意味します(右側のグラフ)。これは、経済の成長率が、金利の上昇率を上回ることを前提に考えられているからです。

(注意)財務省ホームページでは、令和7年度の基礎的財政収支対象経費(=歳出総額から国債費の一部を除いた経費のこと。当年度の政策的経費を表す指標)は87兆6,760億円(75.9%)です。



特別会計とは?

特別会計とは、特定の事業を行うために、一般会計とは別に設けられた会計制度です。特定の収入と支出を管理することで、事業の透明性を高める役割を果たします。しかし、その仕組みにはいくつかの問題点も指摘されています。

令和6年度には13の特別会計が存在します。

・交付金及び譲与税配付金特別会計(内閣府、総務省、財務省)

・地震再保険特別会計(財務省)

・国債整理基金特別会計(財務省)

・外国為替資金特別会計(財務省)

・財政投融資特別会計(財務省及び国土交通省)

・エネルギー対策特別会計(内閣府、文部科学省、経済産業省、環境省)

・労働保険特別会計(厚生労働省)

・年金特別会計(内閣府及び厚生労働省)

・食料安全供給特別会計(農林水産省)

・国有林野事業債務管理特別会計(農林水産省)

・特許特別会計(経済産業省)

・自動車安全特別会計(国土交通省)

・東日本大震災復興特別会計(国会、裁判所、会計検査官、内閣、内閣府、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省)

参考:「令和6年版特別会計ガイドブック」(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/fy2024/index.html



主な特別会計は以下の通りです。

「国債整理基金特別会計」は、国債の償還や利払いを管理します。国債の償還に備えて一般会計や他の特別会計から資金を繰り入れます。国債の償還には「60年ルール(発行後60年で償還する)」があり、新規の国債発行とは別に、満期償還を迎えた国債の借換債を発行しています。

「財政投融資特別会計」は、国の政策目標に従って財投債(財政投融資特別会計国債)で資金を集め、地方公共団体や政策金融機関等へ融資を行います。財投機関には、政策金融機関(日本政策金融公庫・国際協力銀行等)、独立行政法人(住宅金融支援機構・日本学生支援機構等)、地方公共団体、官民ファンド等があります。

「外国為替資金特別会計」は、“ドル買い・円売り”や“ドル売り・円買い”といった為替介入を通じて、急激な為替変動を抑制し、経済の安定を計ります。外貨を買入れする時には、政府短期証券を発行して円貨を調達しています。外為特金の収益(剰余金)は、一般会計や翌年度の外為特会の歳入に繰り入れられています。

「自動車安全特別会計」は、自動車の安全を守り、交通事故の被害者を助けるための特別会計です。自動車重量税や自賠責保険料の一部が収入源になっていますが、当会計においては、過去に一般会計に繰り入れられた約1兆1,200億円のうち、約5,800億円が未だに戻されていません。昨年末の臨時国会でも問題視され、石破首相も「着実に繰り戻しを進める」と答弁しています。

参考:「衆議院ホームページ第216回国会」https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/youkou/g21605004.htm



令和6年度予算における特別会計の歳出総額は436兆円ですが、会計間のやりとりや国債の借り換え(借換債)を除くと、歳出純総額は207.9兆円になります。一般会計の115兆円(令和7年度当初予算)に比べると、金額が大きくなります。



出典:「特別会計の歳出予算額」(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/yosan.html

特別会計の問題点!

・透明性の欠如:特別会計は、一般会計ほど詳細な審議が行われず、国民の目が届きにくい。

・官僚の利権化:特別会計の一部資金が、官僚の天下り先となる企業や団体に流れているケースがあると言われている。

・資金の非効率な運用:目的外の用途に資金が流用されたり、不要な積立金が発生したりする可能性がある。

・財政の全体像が見えにくい:特別会計は一般会計とは別に管理されているため、国家財政全体の状況を把握しにくい。

その他にも、各省庁の管理権限が強く、無駄が生じやすいことや予備費の予算計上が繰り返されていることが問題視されています。



連結決算とは?

連結決算とは、一般会計、特別会計に加え、国の関係機関(独立行政法人など)を含めた全体の財政状況をまとめた決算です。国全体の資産、負債、収支を把握することで、より正確な財政状況を把握することができます。



出典:「令和4年度 連結財務書類の概要」(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2022/20240326houdouhappyou.html

【資産の部:962.7兆円】

・有価証券:363兆円(外国為替特別会計と年金積立金を含む)

・貸付金:161.3兆円(独立行政法人や国立大学法人等への貸し付け)

・有形固定資産:281兆円(公共用財産の道路や河川、国有財産の土地や建物、河川等)

【負債の部:1544.5兆円】

・政府短期証券:87.7兆円(外国為替特別会計の負債)

・公債:1,132.9兆円(建設公債、特例公債、財投債、復興債、年金特例国債)

・公的年金預り金:127.6兆円(年金積立金の当初の資金)

【資産・負債差額の部(差額):120.2兆円】

・年金積立金(GPIF)の純資産85.4兆円を含む。



出典:「令和4年度 国の財務諸表のポイント(一般会計・特別会計及び「連結」)(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2022/point.renketu.pdf

無駄遣いが指摘される「国の基金」とは?

「国の基金」とは、国の予算を原資とし、特定の政策目的のために積み立てられた資金のことで、独立行政法人や公益法人などに設置されます。

基金の残高の7割弱は経済産業省が所管する基金が占めており、一度国からお金が支出されると国会などの監視が働きにくくなることが問題視されています。

「国の基金」の無駄使いが指摘されるようになったことから、令和6年4月行政改革推進会議が、国の200基金事業(152基金)の点検・見直しを行いました。見直しの結果、一部事業の廃止と国庫返納予定額を発表しています。また、今後の予備措置は3年程度とするなど、定量的な成果目標も設定されました。

参考:令和6年4月22日行政改革推進会議「基金全体の点検・見直し結果について(案)」https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai56/siryou1-2.pdf



国の借金(国債と借入金などの合計)

財務省が公表している「国の借金」は、国債、借入金、政府短期証券の合計額です。「国の借金」は、すでに1,300兆円を超えています。国債の発行残高が増え続けると将来の利払い費が増えるために、財政健全化が課題になります。

一方で、国の財政状況を連結対象法人や国の基金にまで広げることで、表に出てこない資産が隠れている可能性もあります。



出典:「FP実務の基本データ集」(日本FP協会会員向け提供資料)

最後に

国の財政は、私たちの生活と未来に深く関わっています。一般会計、特別会計、連結決算といった基本的な仕組みを理解することは、複雑な財政問題を読み解く第一歩です。ニュースや新聞で報道される財政関連の情報を、より深く理解できるようになるからです。

しかし、日本の財政は、プライマリーバランスの赤字、基金の不適切な運用、特別会計の不透明性など、多くの課題を抱えています。これらの課題を解決し、持続可能な財政を実現するためには、世代間の公平性を考慮した、長期的な視点での政策議論が不可欠だと考えています。

【補足】

2025年3月4日、令和7年度予算案は29年ぶりに修正を行ったうえで、衆議院で可決され、参議院に送られました。しかし、自民党が少数与党になったことで現時点(3月20日)では、参議院においても修正の可能性が残っています。憲法の規定では、衆議院で可決していることから、参議院送付の30日後の4月2日に自然成立する可能性もあります。

3月4日に衆議院で可決した主な修正内容(3,437億円減額)は以下の通りです。

・歳出:高校授業料の無償化(+1,064億円)、高額療養費見直し(+55億円)、地方交付税交付金(-2,056億円)予備費の削減(-2,500億円)

・歳入:「103万円の壁」引上げで減収(-6,210億円)、税外収入/ワクチン基金(ワクチン大規模臨床試験等支援基金)返納など(+2,793億円)

参考:「予算修正(国会修正)(令和7年3月4日衆議院可決・参議院送付)(財務省)https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/shuseian.html
SHARE
シェアする
[addtoany]

ブログ一覧