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朝イチの株価と消費者余剰(経済学と株価)

市場メカニズム



スーパーマーケットでは夕方になると値引きされた新しいシールが商品に張られます。売れ残りを防ぐための知恵ですが、これはお客さんには魅力的なサービスです。また、スーパーのチラシで「安い卵」を見つけた時は、普段は行かない隣町のスーパーにも足を運ぶかも知れません。

わたしたちの生活では、価格次第で購入を決めたり、止めたりすることが日常的に行われます。一見、大企業がモノの価格を決定しているように思いますが、多くの品物は消費者の需要企業側の供給でその価格が最適な水準へと導かれています。

 

需要曲線とは


通常、消費者は商品を安く買いたいと考えます。つまり価格が高ければ購入者は少なくなり、価格が下がるにつれて購入者が増えていきます。この関係をグラフにしたものが、右肩下がりの需要曲線です。メロン1玉の価格を縦軸に、消費者の購入量を横軸に描いています。(グラフでは直線で表示していますが、直線は曲線の一部と考えます)


供給曲線とは


メロンの価格が上がれば、儲けを増やすために生産者はメロンの生産量を増やします。逆に価格が下がれば、儲けが減るので生産量を減らします。この関係は、左肩下がりの供給曲線で描かれます。


ふたつのグラフを同じ図表に描きます。



需要曲線と供給曲線が交わる点(均衡点)で価格は決定します。このケースではメロンの価格は500円になります。売れたメロンの数は50玉です。500円の水準で買いたい人の量と売りたい人の量が釣り合っており、参加者全員が満足している状況です。500円の価格で買えた消費者も500円の価格で販売できた生産者も納得できる水準だと考えている訳です。

 

消費者余剰と生産者余剰


取引の成立した500円を均衡価格と呼びますが、このグラフの中には500円以上でも購入を希望される方がいました。700円で購入を考えていた人が、実際には500円で買えたことで、その差額分200円(Aの部分:700円-500円)だけ得した気分になります。「思っていたよりも安く買えて良かった」という訳です。これを「消費者余剰」と呼びます。

また、生産者の中にも300円で販売しても採算が取れる人がいます。実際には500円で売却できたことから、200円(Bの部分:500円-300円)が得した気分になります。こちらは「生産者余剰」と呼ばれます。

いずれもミクロ経済学の概念ですが、この原理は株式の価格決定のメカニズムにも似ています。(※実際の消費者余剰や生産者余剰は面積として算出します。)

 

まずは株価の4本値を確認


新聞では、〇〇電機508円(前日比+2)といった表示を見ますが、一日の株価の動きは、始値(はじめね)、高値、安値、終値(おわりね)の4本の価格で確認できます。


便利なツール「板情報」


取引が始まる9時に近づくと多くの投資家が、市場に売買注文を入れてきます。その注文内容を1枚の板の上に晒すことから取引の準備が始まります。これを一般的に「板情報」と呼びます。以下のグラフ「Ⅰ」です。

この「板情報」では、いくらの値段で何株の売買注文が入っているのかが、一目で分かります。中央の値段を挟んで左側に売却注文の株数、右側に買付注文の株数が表示されています。取引が成立すると発注された株数が消える仕組みです。

 

朝イチの株価、つまり始値に注目。


仮にA株式の9時前の「板情報」が以下のような状況だった場合、株価がいくらで始まるのかを考えます。


価格決定のプロセスは後ほど解説しますが、A株の朝イチ(始値)の価格は、498円となり、右側の買い注文500円(3,000株)や499円(5,000株)は、希望価格よりも安い498円で買付できます。先程お話しした「思ったより安く買えた」満足感(消費者余剰)を得られる訳です。売却注文を出した投資家も同様で、497円(6000株)の売却注文に対して実際は498円で売却できました。1円高く売却できたことで「儲かったな」と感じることでしょう。こちらは生産者余剰です。朝イチで取引が成立した部分は赤字で表記しています。

 

ちょっと複雑ですが・・・


始値を決定するプロセスはグラフ「Ⅱ」の手順になります。

「価格はいくらでもいいですよ」を意味する成行(なりゆき)注文(買①と売①)を一番に差し引きします。そのあとは、絵画のオークションと同じで、より高い価格を提示した人に優先的に購入する権利(買②⇒③⇒④)が発生し、逆に売り注文はより安い価格を提示した人に優先的に売却できる権利(売②⇒③)が与えられます。グラフ「Ⅱ」の成立のプロセスからその手順を確認してください。

 


【内容確認】

買い注文(①~④)と売注文(①~③)は、何れも498円で売買が成立します。ここでのポイントは、高い価格で買い注文を入れた投資家も、安い価格で売り注文を入れた投資家も、全員が498円で取引できたということです。ただし498円(買④)1,000株だけは残っています。グラフ「Ⅲ」で確認できます。

 


売買成立後の板情報は上記の通りです。その後の注文は板情報に順次追加されていきます。

(注)一般的な取引所の売買時間は、前場(ぜんば)と後場(ごば)に分かれており、前場にあたる午前の取引時間は9:00~11:30で、後場にあたる午後の取引時間は12:30~15:00です。始値以外にも前場の終わりや後場の始まりと終わりも同じ方法で価格が決定します。この方法は「板寄せ」と呼ばれます。価格の決定後(グラフⅢ)は、「ザラ場」と呼ばれるオークション方式が採用されています。

 

株価も投資家の需要と供給で形成される。


ここまでの約定プロセスは、まさにメロンの需要曲線と供給曲線の関係と同じです。「買い手の需要」と「売り手の需要」、安く買えた投資家の満足感は「消費者余剰」であり、高く売れた投資家の満足感は「生産者余剰」を表します。そして市場メカニズムの素晴らしいところは、この透明性と分かりやすさにあります。


最後に


イギリスの経済学者アダム・スミス(1772~1823)が唱えた「神の見えざる手」とは、人々が自己の利益だけを追求しても、結果的には市場メカニズムが働いて社会全体の利益も増大するとの考え方です。「需要と供給」や「始値の決まり方」は、まさに市場メカニズムそのものです。このように日々の金融市場では「神の見えざる手」が働いていますが、それはマーケットだけに限らず、私たちの日常生活の様々な場面でも見つけることができます。

【株式・投資信託等の各商品にはサービス及び商品ごとに所定の手数料や諸経費等の負担が発生する場合があります。また、商品ごとに価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。ご投資に当たっては、上場有価証券等書面、当該商品等の契約締結前交付書面又はお客様向け資料等をよくお読みください。なお、当ブログは資産運用の啓蒙を目的としており金融商品の勧誘は行っておりません。】

 
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