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トレンドは誰が決めるの(投資のヒント)

来年の流行色は、もう決まっている


洋服の流行色は、国際間で流行色を選定するインターカラー(国際流行色委員会)という組織が、実際のシーズンが訪れる2年前に選定するのが通例です。つまり、この機関が最も早い時期に流行色を人為的に決定しています。ファッション業界では、その候補となるカラーに従って、素材やデザイン、関連アイテムなど試作品を練り上げていく訳です。ちなみに、日本における流行色は、実際のシーズンが訪れる1年半前に決まります。

(参考)インターカラーHP:http://www.intercolor.nu


トレンドは誰かが決める


洋服や髪型、映画や食べ物に至るまで、その流行は消費者の嗜好だけで決まっている訳ではありません。そこに携(たずさ)わる業界関係者が水面下で働きかけて、流行を作っている場面は数多くあります。ここ数年、世界の音楽業界で躍進する韓国のK-POPはその典型でしょう。

 


業界団体と行政


 一般的に多くの業界では、関連会社の利益を上げるために、業界団体を作って政府や行政に働きかけます。建設業界、食品業界、電機業界、鉄鋼業界、製薬業界、銀行業界、他にも士業(税理士会等)や医師会まで仕事の数だけ業界団体が存在します。

行政側も業界団体と繋がることで、企業毎に対応する煩わしさから解放され、お互いにメリットを享受出来るわけです。

つまり、業界団体の意向を如何にして国の経済政策に反映させるかがポイントになります。そのために業界トップは政治家や行政側と強いパイプを持ちたいと考えます。首相の息子や携帯キャリア大手の幹部が、通信業界を統括する総務省へ過度に接待攻勢をかけていたのも頷(うなず)けます。

 

ヒントは、日本の統治システム(三権分立)にあり


国の権力は、法律を作る国会(司法)、政治を行う内閣(行政)、裁判を司る裁判所(司法)の三権に分けられており、互いにチェックしあい、上手くバランスを保っています。この三権が民主政治の最上階に位置しており、業界団体や各企業との接点となります。

 



三権分立の仕組みは中学校で教わりますが、それは我々の日常生活にも大きな影響を及ぼすからです。簡素化した組織図で日本の統治システムを確認しておきましょう。



実際の政治は内閣の支持を受けた各省庁が担当します。先程登場した総務省の他に、内閣府、財務省、国土交通省や文部省など10以上の省庁があります。

例えば、総務省の仕事内容をみると、行政運営の改善、地方自治体の管理、マイナンバーの管理情報通信5G、日本郵政グループの監督など幅広い業務を担当しており、多くの業界と深い関係にあることが分かります。

先日、某デジタル担当大臣が顔認証アプリの導入に対して、ある大手総合電機会社を取引先から外すように指示する音声が流出しました。数十億円規模の取引が、いとも簡単に取り消されるリスクに企業は晒(さら)されています。

 

内閣の動向がマーケットのトレンドを作る


トレンドを探るポイントは、国会に提出された法案内閣の動向に注意を払うことです。その法案の原案は、多くの場合、各省庁と経済界の擦り合わせで作られており、その動向は全国紙やニュースからでも推測できます。

実際に6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」の中から成長戦略を見てみましょう。

ここには、「日本の未来を拓く4つの原動力」として、①グリーン社会の実現 ②官民挙げたデジタル化の加速 ③日本全体を元気にする活力ある地方創り ④少子化の克服、子供を生み育てやすい社会の実現 を掲げています。このあたりがマーケットのトレンドになりそうです。


成立した法案ともリンクしている


今国会(6/16閉会)で成立した法案からも、その傾向は確認できます。成長戦略の柱であるデジタル関連法案、脱炭素やデジタル化を後押しする改正産業競争力強化法、環境に配慮した改正地球温暖化対策推進法プラスチック資源循環促進法など「日本の未来を拓く4つの原動力」とリンクしています。デジタルや脱炭素に関連する企業を調べてみては如何でしょう。

また、一定の所得がある高齢者(75歳以上)には、医療費負担を2割に引き上げる医療制度改革関連法が成立しました。病院を敬遠してドラッグストアやコンビニで薬を購入する高齢者が増えるかも知れません。

3年を経て成立した改正国民投票法は、憲法改正の議論を活発にするでしょう。今後、憲法9条に話題が集まれば、自衛隊の在り方や防衛費拡大がマーケットのテーマになるかも知れません。(日本の防衛費はGDP比で1%以下に抑えるという「暗黙のルール」があります。そのために先進国の中でも極めて少ない予算しか確保できていないからです)

 


最後に


 池に小石を投げ込んだら水面に波紋が広がります。その小石を投げ込む行為が法治国家においては、法案の成立であり内閣の行政運営にあたると考えています。冒頭、流行色がシーズン到来の2年前にインターカラーで決まることを書きましたが、法案成立から私たちの生活に直接影響が及ぶまでにも、一定の時間が経過します。いま起きていることの源流をたどれば、見えなかった何かを発見できるかも知れません。トレンドを見つけるヒントもこの辺りにありそうです。
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